従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅を長期優良住宅といいます。新築住宅についての認定制度は、平成21年6月4日から開始され省エネ性能の高い家として知られています。今回は長期優良住宅のメリット・デメリットについて解説します。
■制度の概要
長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができます。
認定基準
1。住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
2.住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
3.地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
4.維持保全計画が適切なものであること。
◇メリット
耐久性・耐震性が高く省エネ性能に優れ、国が定めた認定基準をクリアすると、長期優良住宅の認定を受けることができ、税制面などの優遇措置を受けられる。
《令和4年度国土交通省税制改正概要より》認定長期優良住宅に係る特例措置
【住宅ローン減税】
控除額は一律0.7%、控除期間13年間
2022年・2023年の借入限度額 5000万円
2024年・2025年の借入限度額 4500万円
【住宅取得等資金に係る贈与税非課税措置】
非課税限度額を良質な住宅について1000万円とした上で、2年間延長 (※良質な住宅とは、一定の耐震性能・省エネ性能・バリアフリー性能のいずれかを有する住宅)
【登録免許税】
税率を一般住宅特例より引き下げ
◎所有権保存登記:一般住宅特例0.15%→0.1%
◎所有権移転登記:一般住宅特例0.3%→0.2%
【不動産取得税】
課税標準からの控除額を一般住宅特例より増額
◎一般住宅特例1200万円→1300万円
【固定資産税】
一般住宅特例(1/2減額)の適用期間を2年延長
戸建て:3年→5年
省エネ性能に優れた住宅の普及を促進するため、住宅ローン減税等の取得税等に係る特例措置のほか、上記の現行の措置を2年間(令和4年4月1日~令和6年3月31日)延長する。
◇デメリット
・申請に時間がかかる
所管行政庁の審査を経て認定を得る必要があり、住宅性能評価機関による技術審査が必要。
・申請に費用がかかる
長期優良住宅制度を申請するときには、認定申請書や複数の添付書類が必要。書類の作成や代行申請に別途費用がかかるケースが一般的です。
・建築コストが高い
長期優良住宅の基準にあわせて質の良い住宅を造るので、一般的な住宅と比べると建築コストは割高になります。
・完成後にもコストがかかる
入居後も認定された維持保全計画に従ってメンテナンスを行わなければなりません。メンテナンスを怠ると認定が取り消され、税や補助金などの優遇を受けていた場合には、その分の金額の返還を求められることもあるので注意が必要です。維持保全の実施期間が30年以上と長期であり、点検の時期の間隔が10年以内。必要に応じた修繕、改良をし、その記録を作成・保存することになります。長期優良住宅にかかわらず、住宅を長く快適に住める状態に保つためには、メンテナンスは必要不可欠です。
■まとめ
耐震性を満たすことは地震に強い家となり、省エネ性を満たすことで断熱性が高まり、空調機器の効率が良くなる。そのため少ないエネルギーで夏は涼しく、冬は暖かい家になります。また月々の光熱費が抑えられるメリットがあります。長期優良住宅は、高い住宅性能によって快適かつ安心できる家で、世代を超えて暮らすことのできる住まいを実現します。また税制面での優遇措置も大きな魅力の一つです。