
近年、住宅ローンの返済期間を「35年」ではなく「40年」で組む人が増えています。何年か前までは「35年ローン」が最長と言われていましたが、いまや金融機関の多くが40年ローンを扱い始め、若い世代を中心に利用が広がっています。では、なぜ今40年ローンが選ばれているのでしょうか? 今回は40年ローンの現状とメリット・デメリットを解説します。
■40年ローンが選ばれる理由
①建築コストの上昇による住宅価格の高騰
ウッドショック以降、木材や鉄骨などの建材費が大幅に上昇し、さらに人件費や輸送コストの高騰も重なって、家づくりの総額はここ数年で急激に増えています。以前と同じ予算では希望の家が建てにくくなり、返済期間を40年にすることで「少しでも月々の支払いを抑えたい」と考える人が増えたのです。
②物価上昇による家計の圧迫
食費や光熱費など、生活に関わるあらゆる費用が上がる中で、家計の固定出費をできるだけ抑えたいというニーズも強まっています。返済期間を35年ではなく40年に延ばすことで、月々の返済額を軽くできることから、無理のない返済計画を立てやすくなり、家計にゆとりを持たせるメリットがあります。
③金利上昇への警戒感
長らく続いた「マイナス金利政策」の解除に伴い、金利の上昇を意識する人が増えています。住宅ローンでは依然として変動金利を選ぶ人が多いものの、金利が上がれば返済額も増えるため、結果的に総返済額が大きくなる可能性があります。特に子育て世帯では、「月々の支払いを抑えて生活にゆとりを持たせ、その分を貯蓄などに回して将来の金利上昇に備える」という考え方から、40年ローンを選ぶ人が増えているのです。
④若年層の収入
収入は個人差がありますが、20~30代前半はまだ収入が安定していない人も少なくありません。35年ローンでは希望額を借りられない場合でも、返済期間を40年に延ばすことで借入可能額を増やせる点が大きな魅力です。「今は余裕がないけれど、将来収入が上がったら繰り上げ返済をする」という将来を見据えたプランで若い世代がマイホームを手にするチャンスを広げています。
⑤ライフスタイルの多様化
共働きが一般化し、転職や副業など働き方が多様になる中で、返済に柔軟性を持たせたいという考え方も広がっています。40年ローンは「繰り上げ返済」によって実質的に35年や30年で完済することも可能で、ライフステージの変化に合わせて返済計画を調整しやすいのが特徴です。

■40年ローンのメリット
1.月々の返済額を抑えやすい
返済期間を35年から40年に延ばすことで、毎月の返済額を抑えることができます。月々の負担が軽くなることで、家計にゆとりを持ちながら返済を進められます。
2.借入額が増えることで理想の住まいを実現しやすい
銀行のローン審査は返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)を基準に借入額が決まります。40年ローンでは毎月の返済額が抑えられるため、借入可能額が増え、理想の家づくりがしやすくなります。
3.返済計画に柔軟性を持たせやすい
返済期間を長く設定しておくことで、ライフステージや収入の変化に応じて無理のない返済計画を立てることができます。将来的に余裕ができた際は、繰り上げ返済で期間短縮も可能です。
4.団体信用生命保険(団信)の加入で長期間の安心
返済期間に連動して団信の保証が続き40年間保証を得られます。契約者に万が一のことがあった際は、残りのローン残高が完済されるため、家族の生活を守ることができます。
■40年ローンのデメリット
1.総返済額が増える
返済期間が長くなるほど支払う利息が増え、総返済額は35年ローンより多くなります。月々の返済額が軽くても長期的には「多く支払う」ことになります。
2.長期間の返済に伴うリスク
収入の変化(転職、病気など)やライフイベントによって、返済計画がずれる可能性があります。その結果、家計への負担が長期化する恐れがあります。
3.金利変動の影響を受けやすい(変動金利を選択した場合)
返済期間が長いため、将来金利が上昇すると返済負担が重くなります。長期間安定した収入が見込めない場合は、リスクが大きくなります。
4.定年後まで返済が続く可能性
若いうちにローンを組めば問題ありませんが、30代後半以降で40年ローンを組むと完済時には定年を大きく超えることになります。退職後も返済が続くと、老後の生活資金に影響する可能性があります。
■返済額の比較:35年ローン・40年ローン
変動金利を選択した場合、金利が上がれば返済額も増えるため、ここでは住宅金融支援機構の全期間固定金利型【フラット】で比較しています。
◆4500万円を借りた場合の毎月返済額を比較

毎月の返済額を比較すると、35年返済では毎月14万6540円、40年返済では毎月13万6034円です。毎月の差はわずか1万506円ですが、年間にすると12万6072円と意外に大きな差になります。
◆4500万円を借りた場合の総返済額を比較

40年ローンは35年ローンより毎月の返済額は軽くなりますが、返済期間が5年長くなるため、総返済額は374万9731円多くなります。将来的に経済的な余裕ができた場合には、「繰り上げ返済」で返済期間を短縮し、その部分の利息を減らすことも可能です。
■まとめ
40年ローンは月々の返済額を抑えられ借入額が増えることから、より性能の良い住宅や広い家を選ぶことが可能になります。若い世代にとってマイホームの夢を実現しやすくなる一方で、長期ならではのリスクを理解し、将来を見据えた返済計画を立てることが欠かせません。長い返済期間を上手に活かすためには、ライフステージに応じた資金の見直しや将来的な収入変化を想定した家計管理がポイントです。余裕ができた時期には繰り上げ返済や貯蓄に充てるなど、柔軟に対応できる備えをしておくと安心です。「今の暮らしにゆとりを持ちながら、将来の安心も見据える」そんなバランスの取れた資金計画こそが、40年ローンを賢く活かすカギといえるでしょう。
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